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在外研究2——イギリスに出発する前の準備

・仮滞在先の確保

全てが後手後手にまわった在外研究の諸々で唯一早めに動いて実際に成功だったのが仮滞在先の確保です。近年はイギリスにリサーチで行く場合は、自炊できるアパートメントホテルを利用していましたが、ブライトンにはリーズナブルなアパートメントホテルがなく、いいところは割高なので、初めてAirbnbでフラットを丸々借りることにしました。先達の方にフラット探しには20日くらいの余裕は必要と聞いていたので、24泊予約したものの結局そのままフラットに入居することはできませんでした。フラット探しについてはまた次回以降に書きます。

・送金手段の確保

イギリスで在外研究する際には複数の送金手段を予め確保しておくことをおすすめします。これについては失敗したので、詳細は省きます。カナダからの招聘教員の方にTransferwiseをおすすめされていたのに、日本で準備せずにイギリスに来てしまったのは失敗でした。また銀行から送金する場合はマイナンバーを予め提出しておくことが必要なので、海外への転出届を出してしまうとマイナンバーは返納することになるので、手続きができなくなります。

また現在イギリスの銀行口座をもっていて将来イギリスで在外研究をする可能性がある方は、あらゆる手段でイギリスの銀行口座を維持することをおすすめします。私は(2006年を最後に二度と海外に行くことはないと釧路で就職するまでは思っていたので)留学時代に開設した銀行口座をほっぽらかしにして維持できなかったので、フラットの賃貸契約でいろいろと不便をしました。その他の支払いも基本はdirect debit(口座引き落とし)というものが多く、銀行口座を開くまでできないことがありました。

・保険

Visitorビザによる滞在はイギリスの医療制度でカバーされないので海外旅行保険に入ることにしました。比較検討する余裕がなかったので以前から利用している「たびほ」にしました。

・税金

日本の税金に関して出発前にしたことは税務署に納税管理人の届出書を提出したことだけです。こちらのリンク先にも書かれている通り、日本に支払う所得税や住民税が免除される非居住者になるためには、1年以上海外に滞在する必要があります。このことについては、在外研究について書かれたブログで知ってはいました。私は規定上1年以上滞在することはできないので、最初から居住者扱いなのですが、電話で問い合わせ(て日本で給料をもらう公務員だと伝え)たら納税管理人を選任して届け出よと言われたので、そうしました。これが正しかったのかどうかは今後の展開次第ですけど・・(イギリスで問い合わせた結果が不適切で二度手間になった経験で疑心暗鬼に・・)

(2月14日夜に追記)
・国際運転免許証(国外運転免許証)

出発直前に申請発行手続きを行い、イギリスにもってきました。イギリスで運転する条件については大使館のページにある「参考事項」を参照してください。

(2月19日夜に追記)
・転出届提出

海外に転出届を提出するとマイナンバーが返納となるので注意してください。在外選挙人への登録手続きも同時にできましたが、手続き完了には在留届の提出が必要になります。また転入する時に戸籍の書類が必要だと言われました。

(3月5日に追記)
・勤務先の上司と日本の大家への根回し
次の記事に書きましたが、イギリスで(ブライトンで?)賃貸契約をする際の手続きで借り主の身分照会をする手続きがあります。照会会社から勤務先の上司と日本で借りている賃貸物件の大家に問い合わせが行く可能性があると日本を発つ前に予め伝えておくのがいいと思います。

在外研究1——ビザ申請など

2019年秋から以前に留学していたイギリスのSussex大学で在外研究をしています。すでに在外研究期間の3分の1が経ってしまいましたが、これからイギリスで在外研究される方々の参考になるかもしれないので、簡単な記録を残しておきます。何か問題点がありましたら御指摘いただければありがたい限りです。

・在外研究の受入先について

勤務先では在外研究に出る前年度に申請しなければならず、その際に受入先も(ある程度)決めておかなければいけないので、2年前くらいからいろいろな人から話を聴いたりして考え始めました。受入教員の主なパターンとしては、(日本の)指導教員の紹介、国際学会などで知り合った研究者、メールで直撃などがありそうです。知り合いには留学していた時の指導教員にお願いする方々がわりといるのですが、私の場合は留学がtaught courseで、お世話になった教員とは修了してから全く連絡をとっていなかったので、その選択肢もあまり考えていませんでした(最終的にはメールを出してみて何ヶ月か経ってから断られたのですが)。

というわけで、2017年秋にSussex大学でリサーチをした際に、元々twitterでつながっていた今Sussex大学で思想史を教えているイアン・マクダニエル氏に会うことにしました。留学時代に世話になった現St Andrews大学のリチャード・ワットモー教授にも問い合わせメールを出したのですが、申請時点で返信がなかったのでSussex大学で在外研究をする方向で申請しました。

・ビザ申請

イギリスに在外研究する研究者は、Standard Visitorビザの範疇に入るacademic visitか一時労働者向けビザのTier 5を取得して在外研究をすることになります。イギリス政府の公式サイトでの説明は以下の通りです。

Standard Vistorの説明はこちらです。

該当するTier 5の説明はこちらです。

後者を取得するには受入先が発行するCos (Certificate of Sponsorship)という書類が必要になります。Tier 5については(情報は古いものの)こちらのブログが参考になります。Sussex大学は在外研究期間が1年未満の研究者にはCosを発行するのではなくフェローとしての受け入れる旨のconfirmation letterでvisitorビザを申請してもらう方針のようだったので、勤務先の規定上1年以上は滞在できない私はacademic visitで申請することになりました。

ただちょうど在外研究期間中に期限が切れるパスポートを所持していたために、パスポートの更新ができるようになる期限切れ1年前になってからパスポートを申請して新しいパスポートを手に入れてからでないと動き出せなかったので、(受入先に申請するのも含めて)出遅れてしまいました。

結局、受入期間を変更したletterを再発行してもらってacademic visitでのビザ申請を目指すことになりました。この時点で出発予定まで2ヶ月だったので、かなりの出遅れでした。さらにオンラインのヴィザ申請に入力すべき情報が多く、(在外研究前の授業負担増で学期末に身動きがとれなかったことのもあって)ヴィザ申請を始めてから終えるまで十日以上かかってしまい、出発まで一月半になっていたので仕方なく5日で申請の可否を判断してもらえる割高なpriority serviceを利用しました。

(申請に必要な情報は今手元にないので後で追加するかもしれませんが、現在の仕事、滞在の目的や資金、滞在先(予定)、専門技能、近年の海外渡航歴、イギリスの自転車運転免許の有無、リベラル・デモクラシーの価値観に反対する(テロ)組織などへの加入したことがあるか、敵国のために働いたことがあるか、などなど多様な質問項目がありました。ただ、すべての入力項目について証明する書類が必要なわけではないようです。)

(最後に特記事項を記入できるのですが、私はパスポートの名前と(学術活動にも用いている)本名が異なるので、その旨を記入しました。また、近年の海外渡航歴を申告する際に滞在日数1日未満に対応していないため、トランジットで入国して観光したトルコは1日滞在したことになっているが実際には1日未満だと記入しました。)

申請自体はイギリス政府のサイトからオンラインで行うのですが、生体認証付き滞在許可証Biometric Residence Permit(BRP)に必要な指紋などの情報とパスポートその他の書類を提出するためにVFS Globalという申請手続代行会社の事務所に出向かなければなりません。日本には東京と大阪にしか事務所がないので、オンラインで予約して新橋にある東京の事務所に出向きました。ウェブサイトはこちらです。

リンク先のサイトにある通り、追加料金を払うことでいろいろなサービスを受けられます。あまり情報がなかったので、待ち時間なしで個室で申請ができるサービスの他、金に糸目をつけずいろいろな追加サービスをつけてしまいましたが、パスポートをレターパックで郵送してもらえるサービス以外は必要なかった気もします。ただ、通常の窓口を利用する場合、かなり待たされることもあるようなので、待たされずに手続きをしたい方には有益かもしれません。

提出書類のうち実際に提出するのはパスポートのみで残りはスキャンします(スキャン代行サービスを利用したので、代行サービスを利用しない場合どうするのかはわかりません)。

提出した必須書類
(査証欄に空きがある)有効なパスポート(未使用)
(勤務先発行の研究課題と期間を示した)在外研究承認証明
受入先大学発行のletter。

提出した任意書類
(勤務先発行の給料を示した)在職証明書
住民票とその英訳と翻訳証明書
(勤務先発行の在外研究の)資金援助証明書
銀行口座の残高証明書
(勤務先発行の在外研究中の)給料支払い見込証明書
期限切れパスポート(の写真ページのコピー)。

受入先大学からのletterはpdfファイルを印刷したものです。

勤務先(の職員)は非常に協力的で助かりました。いろいろな証明書を出していただきましたが、勤務先が在外研究を承認していることと、その間にどれだけの給料が支払われるかが示されていれば、上司のレターなどでも構わないはずです。

住民票の翻訳は上記のブログで紹介されていた「くまざさ社」という会社にお願いしました。
(責任の所在がはっきりしていれば業者にお願いしなくてもいいようですが、とにかく忙しくてなるべく少ない労力で済ませたかったので、ブログで紹介されていた業者にお願いしました。)

銀行口座の残高証明書は必要だったのかよくわかりません。メインバンクがポンド建ての英語の残高証明書を発行してくれたので提出しました。

VFSの事務所での申請手続きは数十分だったと思います。提出書類の確認とスキャン、指紋の採取と写真撮影だけなんですけど。後は返送用レターパックに送付先を記入しました。priority serviceで申請したので、数日で結果が出たというメッセージが来て(結果自体は知らされない)一週間くらいでパスポートが戻ってきました。

パスポートに付いているのは入国予定日から一月の入国許可で、入国したら(与えられた選択肢の中から)予め指定しておいた郵便局で生体認証付き滞在許可証Biometric Residence Permit (BRP)を受け取ります(こんな基本的な事実もパスポートが帰ってくるまで知りませんでした・・)。ブライトンの場合は、Churchill Squareショッピングセンター内のWHSmithにある郵便局で受け取れます。

イギリスに来てからの諸々について、続きをまた書きます。